1,権利
在職中に加入していた確定拠出年金では、一度作った確定拠出年金の口座は、原則として退職したとしても、老後の給付が終わるまで残ります。ただし、脱退一時金を受け取った場合は、確定拠出年金の口座はなくなり、将来給付を受け取る権利もなくなります。また、会社のルールによっては、勤続3年未満で退職した場合は、受け取った掛金の全部または一部を会社へ返さなければならないことがあるので注意してください。
2, 手続きと注意点
退職した時に必要な手続きは、転職先の企業年金の状況などによって違ってきます。次の図は、退職・転職したときの確定拠出年金の対応をまとめたものになります。
退職・転職した時の確定拠出年金
- 転職先の企業型の確定拠出年金に入る場合
退職後、運営管理機関からあなたの確定拠出年金の口座に関する資料が届きます。転職先の会社には、自分が確定拠出年金の口座を持っていることを伝えます。会社からの指示に従い、会社が契約している運営管理機関へ「資産移換依頼書」などの書類を提出します。転職先の会社では、入社した社員の確定拠出年金口座にあるお金をそのまま引き継ぐ手続きをしますが、退職した会社で選んでいた金融商品から、新しい会社の制度にある金融商品へ選び替えなくてはなりません。 - 個人型の確定拠出年金(iDeCo)に入る場合
退職後、個人型の確定拠出年金に加入する場合は、自分で運営管理機関を見つけ、手続きをする必要があります。手続きをせずに退職後6ヶ月を過ぎた場合は、法律で強制的に国民年金基金連合会へ移換が行われてしまい、移換手数料のほか、毎月の管理手数料もかかります。加えて、強制的に移換された後にあらためて個人型や企業型の確定拠出年金への移換手続きをしたり、脱退一時金を受け取る場合にもまた手数料がかかります。個人型の確定拠出年金に加入する場合は、個人型を取り扱っている運営管理機関の中から自分で運営管理機関を選び連絡をとります。どんな運営管理機関があるかを知りたい場合は、iDeCo公式サイトで調べることができますので参考にしてください。運営機関一覧(iDeCo公式サイトへリンク)運営管理機関によって、取り扱っている金融商品や運営管理手数料が異なります。一定の条件の下ではこの運営管理手数料がかからない運営管理機関もあります。また、金融商品の情報提供の方法や口座残高の通知方法、さまざまな手数料等にも多少違いがあります。それぞれの運営管理機関の特徴を理解し、便利で利用しやすい自分の好みにあった運営管理機関を選びましょう。 - 脱退一時金を受け取る場合確定拠出年金は基本的に任意に脱退することはできませんが、次の2つのケースは脱退一時金を受け取ることができます(2017(平成29)年1月以降の脱退一時金の支給要件)。
- 企業型確定拠出年金を脱退する場合~少額の場合に限る~ 企業型の確定拠出年金から脱退一時金を受け取るには、まず、年金資産額が15,000円以下でなければできません。そのほか、次の2つの要件もすべて満たしていなければなりません。
- 企業型・個人型の確定拠出年金の加入者、または運用指図者でもないこと
- 企業型確定拠出年金の加入者でなくなってから6ヶ月以内であること
- 企業型確定拠出年金から個人型確定拠出年金へ移行後脱退する場合~5つの要件を満たした場合に限る~
- 国民年金保険料の納付を免除されていること
- 確定拠出年金の障害給付金の受給権者ではないこと
- 通算拠出期間が3年以下(掛金を拠出しなかった期間は除く)、または年金資産額が25万円以下であること
- 最後に企業型・個人型の確定拠出年金の加入者でなくなってから2年以内であること
- 企業型確定拠出年金で脱退一時金を受給していないこと
- 企業型確定拠出年金を脱退する場合~少額の場合に限る~ 企業型の確定拠出年金から脱退一時金を受け取るには、まず、年金資産額が15,000円以下でなければできません。そのほか、次の2つの要件もすべて満たしていなければなりません。
まとめ
確定拠出年金に加入していた人が転職をする場合は、転職先の会社の企業年金の状況により対応や手続き方法が変わってきます。確定拠出年金は、脱退一時金を受け取ることができる場合を除き、基本的には60歳以降に自分の口座に貯まった資産を受け取り終わるまで口座を持ち続けることになります。長い付き合いになるので、住所変更をはじめ必要な手続きはきちんとしておきましょう。70歳を過ぎたときにきちんと住所変更や必要な手続きをしないでいると、自分の口座にあるお金が国のものになってしまう可能性もありますので、ご注意ください。