定年退職を間近に控えている人の中には、退職金を受け取ったら本格的に資産運用しようと考えている人が多いかもしれません。しかし、資産運用を検討する前に確認し、考えておくべき大事なことがあります。それは今後のお金の収支とライフプランです。
今後のお金の収支と、現在のお金の状況について確認しましょう!
まずは、お金について確認しましょう。ここでお金というのは、退職後の生活における収入と支出、そして現在の資産と負債について洗い出しておくことです。
退職後の収入には主に次のようなものがあります。
- 勤労所得
- 公的年金
- 企業年金や退職一時金
- 財産所得
再就職する場合は、勤労所得をいつまで、いくらくらい受け取れそうでしょうか? また、原則65歳から受け取れる公的年金は、年間でいくらくらいになりますか? 公的年金は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認しておきましょう。
勤め先によっては、企業年金や退職一時金を受け取れます。こうした金額がいくらくらいになりそうかも、確認しておきましょう。株式や債券などの有価証券、不動産といった金融資産がある場合は、配当や賃貸収入も忘れずに確認することが大切です。
次に退職後の支出として、主に次のようなものが考えられます。
- 基本生活費
- 住居費(家賃/住宅ローン)
- 趣味や娯楽の費用
- 医療費や介護費
- 子どもの教育費
食費や水道光熱費などの基本的な生活費、家賃や住宅ローンなどの住居費、趣味や余暇を楽しむ娯楽費用など、どのくらい必要か確認しておきましょう。また、医療費や介護費、子どもの教育費がまだまだかかる場合は学費なども、忘れずに把握しておきましょう。
続いて、現時点で手元にあるお金と借金(資産と負債)についても確認しましょう。
- 現預金
- 有価証券
- 貯蓄性のある生命保険
- 自宅を含む不動産
- 負債残高(住宅/自動車のローンなど)
不動産を保有している場合は、購入したときの金額ではなく、現在の評価額を把握する必要があります。インターネットの不動産情報サイトで近隣の類似物件から大まかな目安を確認したり、不動産業者に相談したりするとよいでしょう。もちろん、ほかにもたくさんの方法があります。
リタイア後の自由な時間はおおよそ8万時間!!ライフプランを明確にしておくことが大切!!
お金について確認できたら、次は定年退職後の人生の過ごし方、時間の使い方について考えてみましょう。そもそも老後は、どのくらい自由な時間があるのでしょうか。
定年退職後の生活で、睡眠などを除いて1日の自由な時間が9時間あると仮定すると、65歳から90歳までの25年間では、約8万時間あります。厚生労働省の「労働時間等関係資料集」によると、一般労働者の年間の総実労働時間はおおよそ2,000時間。40年働いたとすれば、8万時間です。
つまり、定年後の自由な時間は、学校を卒業して就職し、定年退職まで働いた時間と同じくらいなのです。これだけの時間をみなさんはどのように過ごされますか?
具体的なライフプランを準備しておくことが大切なのです。
定年後も働き続けるか、新しい生きがいを見つめるか?
定年退職後の60歳以降も働く人は増加しています。厚生労働省の「高年齢者の雇用状況」(令和2年)では、60歳定年企業における定年到達者の85.5%が継続雇用されているという調査結果があります。
なぜ、多くの人が定年後も働くのでしょうか。公益財団法人ダイヤ高齢社会研究財団「50代・60代の働き方に関する調査」報告書によると、60代前半ではその理由として「日々の生活維持のため」「生活のハリ・生きがいをもつため」を挙げる声が目立ちました。人生にはお金だけでなく、生きがいも大事だという考えが見受けられます。
では生きがいとは何でしょうか。生きがいは主に「個人」、「仕事」、「家族」の3本柱で成り立っていると考えられます。
「個人」は趣味や学習、ボランティアなど、ご自身の興味があることについての活動です。「仕事」はやりがいを求めるのか、報酬を求めるのか、そして雇われるのか個人で働くのかなどが生きがいに影響してきます。最後に「家族」は親、配偶者、子や孫とどのようにして過ごしていくかということです。
これら3本の柱は「お金」と「健康」という土台があってこそ成り立ちます。健康はもちろんですが、大切な土台の1つであるお金については、ぜひ一度しっかりと確認しておきましょう。
ライフプランシミュレーションを作ってみましょう
生きがいのある人生を送るためにも、お金の状況とライフプランが確認できたら、ライフプランシミュレーションをおすすめします。今後の生活費が、今後の収入や手元の資産でまかなえるかを確認するためです。まずは1年単位での収入と支出、金融資産残高の推移を紙に書いて、整理してみましょう。
ライフプランが明確になると、社会保険についても決まります。雇用されて働くのであれば厚生年金保険と健康保険に加入します。自営業もしくは働かない場合は、国民年金保険に任意加入するか、国民健康保険に加入または家族の被扶養者になり健康保険に加入することになります。被扶養者にならない限りは保険料負担が発生しますので、こちらもあわせて書き出しておきましょう。
より詳しくシミュレーションを作成してみたい場合は、各種ライフプランシミュレーションツールを使ってみるか、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に依頼してみるとよいでしょう。
まとめ
退職金を運用したいと考える人は多いですが、まずはお金の「見える化」を行い、ライフプランを明確にすることが必須です。このような考え方はリタイアメントプランニングと呼ばれ、より本格的には相続や贈与なども含めてもう少し幅広く考える必要がありますが、上記で述べたお金の収支とライフプランについては確認していただくだけでも大きな効果があります。
その上で、初めてどれくらいのリスクを取ることができるのか、どのくらいなら運用にお金を回せるのかを考え、資産運用を始めていくようにしていただければと思います。