日本では、貧困に陥って生活保護を受ける高齢者がどんどん増加し続けています。社会全体の高齢化はもちろん、一人暮らし世帯の増加といった、老後の環境変化も関係しています。
高齢者の生活保護を受ける要因としては、健康状態の悪化(世帯主の傷病等)は少数となっており、経済状態の悪化(収入や貯蓄等の減少・喪失)が大半を占めています。健康は維持できていても、お金がなくなって生活できない・・・そんな高齢者が増えているのです。
その背景にはどんな問題があるのでしょうか。
生活保護を受ける高齢者の割合
生活保護を受けている高齢者はどれくらいいるのか、ここではその割合を見ていきましょう。
・全体の5割以上が高齢者
2022年3月の「生活保護の被保護者調査」(厚生労働省)によると、生活保護を受ける人のうち65歳以上の高齢者の割合は半数を超えています。そのうち約9割(月平均84万2820世帯)が一人暮らし世帯となっており、10年前の2012年3月(66万723世帯)に比べると1.27倍になっているのです。
・貧困率は27%に上っている
2016年度の調査では、高齢者の貧困率は約27%に上がっており、高齢者世帯の4世帯に1世帯以上が貧困ということになります。この状況は、今後さらに拡大していくと思われます。
高齢者の貧困率が増加しているのは、少子化や結婚後独立する核家族の増加により、その親である高齢者が一人暮らしもしくは夫婦のみで暮らすパターンが増えていることが考えられます。つまり、高齢者だけで生活することによって、子ども世帯からの扶助を受けにくい環境が作られているのです。
高齢者の生活保護受給率が高い理由
なぜ高齢者の生活保護受給率が高いのか、ここではその理由を見ていきましょう。
・年金だけでは生活が厳しいから
厚生労働省の「令和3年版高齢社会白書(内閣府 」によると、収入の8割以上を公的年金や恩給が占めている高齢者が6割いるとされています。
また、同じく厚生労働省が発表した「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、2020年度の年金の月額平均は厚生年金で14万6,145円、国民年金では5万6,252円となっています。高齢者1人が1ヶ月生活するのに必要な金額は12~15程度と言われているのに対し、国民年金のみを受給している高齢者は5万円台の年金しか受給できていないということになります。そのため、国民年金しか受給していない高齢者は、貧困になる可能性が非常に高いといえるのです。
退職金が少ないから
「退職金・年金に関する実態調査結果」を年度別に見ていくと、2021年9月に発表された60歳の方の退職金額は約2243万円、2018年9月の発表では約2256万円、2016年9月発表では約2274万円になっていました。この調査からは、年々退職金が減少傾向であることが見てとれます。退職金の算定に主に用いる基本給が少しずつ減っていたり、退職金支給の条件が悪くなっていることなどが理由で、1人あたりの退職金が減少しています。現役時代に想定していたよりも少ない退職金になってしまい、老後の計画が狂ってしまうのです。
病気など規定外な出費があるから
歳を重ねると、若い頃よりどうしても病院にかかりやすくなります。日本は国民皆保険であり、国民健康保険や後期高齢者医療制度によって、医療費の自己負担は抑えられていますが、手術や入院を伴う長期入院となると医療費の負担は軽くありません。そうすると、少ない年金では足りなくなり、貯蓄から切り崩して賄うことになるので、現役時代に貯蓄する余裕のなかった人だと困窮状態に陥ってしまいます。
ローンが残っているから
晩婚化が進むことで、マイホームを購入するタイミングが遅くなっています。そのため、定年を迎えるまでにローンを払い終えることができない人が増えているのです。また、老後を過ごすため家をバリアフリーにしたり、老朽化を改善するリフォームが必要になり、歳をとってからリフォームのためにローンを組む人もいます。収入がない中で毎月ローンを払い続けることができなくなり、泣く泣くマイホームを手放す場合もあるのです。
まとめ
日本では、貧困に陥って生活保護を受ける高齢者がどんどん増加し続けているという現状があり、生活保護を受ける人全体のうち65歳以上の高齢者の割合は半数を超えています。その理由としては、年金だけでは生活が難しかったり、病気やローンなどの支払いが問題であることが挙げられます。その中でも年々退職金が減少傾向であることも問題視されており、働いていた現役時代に想定していたよりも少ない退職金になってしまい、老後の計画が狂ってしまっているというのも一つの要素としてあります。
その対策として効果的なのが企業型確定拠出年金であると考えられます。企業型確定拠出年金(企業型DC)は100%損金計上で老後の資産形成ができるというもので、会社の負担なく積み立てができるという所に大きなメリットがあるといえます。また、退職金制度にもなるという所で長期間の老後の収入源として捉えることが可能です!!
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