会社が退職従業員に支給する金銭等のことを「退職金」と呼びます。退職金の支給方法には、退職時に1回限りで金銭等を支給する「一時金」と、定期的に一定の金額を給付する「年金」の2種類があり、それぞれ「退職一時金制度」、「企業年金制度」と呼ばれています。そして、これらを総称したものが退職金制度(退職給付制度)です。
退職金制度を設ける目的
退職金制度を設ける目的は、会社ごとに異なりますが、大きく次の4つの目的があります。
①優秀な従業員を採用するため
良い人材を採用することは、会社が成長し継続するための必要条件の1つです。そのためには、従業員が働きたいと思える労働環境を整備することが必要です。新卒採用でも中途採用でも、応募者は給料のみではなく退職金制度の有無やその他の福利厚生についても注目します。
また、退職金制度がある会社というのは経営が安定している会社であるという印象も与えることができます。終身雇用を前提とした働き方が変わってきているともいわれていますが、それでも退職金制度の有無は採用に影響することから、採用を強化する際には退職金制度も充実させる必要があるといえます。
②従業員に長期にわたり勤務してもらうため
優秀な従業員を採用しても、すぐに辞められてしまっては意味がありません。また、高い技術や能力を持った従業員にはなるべく長く働いてもらうべきです。そこで、長期間の勤務してくれた従業員に対しては退職金の支給額を多くすることで、定年まで働きたいというモチベーションに繋げることができます。
また、勤続年数だけでなく在職中の功績に応じて退職金を増額する仕組みにして、従業員一人一人の生産性を高めることもできます。
③従業員とその家族の退職後の生活を支えるため
従業員の退職後の生活を支えるための公的制度として、厚生年金制度と雇用保険制度があります。厚生年金は老後の生活を、雇用保険の失業給付は次の仕事が決まるまでの間の生活を支えます。
しかし、給付額の減少や給付内容の制限により、公的制度だけでは従業員の退職後の生活を支えるには十分ではなくなってきています。そこで、公的制度を補完するためのものとして退職金制度があります。
④従業員により多くの支給を行うため
上記の①~③の目的は退職金制度でなくとも、給与や賞与を増やすことで対応できます。しかし、退職金制度では給与や賞与に比べて税金の面で格段に優遇されています。さらに、退職金には社会保険料がかからないという特徴もあります。
例えば、賞与として毎年50万円を40年間支給する場合と、退職金として一括で支給する場合とでは、税引前の額面はどちらも2000万円です。しかし、従業員の手元に残る金額は、賞与の場合約1460万円と540万円も減ってしまいます。ところが退職金の場合には2000万円すべてが従業員の手取になります。
このように、退職金は他の報酬に比べて従業員の手元に残せる金額が多いため、効率的な支給方法となっています。
このようなメリットが多いという一方で、デメリットも存在します。
会社にとっての退職金制度のデメリット
退職一時金制度の場合には、退職時にまとまった現金が必要になるというデメリットがあります。定年退職の場合には退職の時期が予めわかっているので、資金の準備をすることができます。しかし、自己都合による中途退職の場合には、いつ現金が必要になるかがわからないため、資金繰りの調整が難しくなります。
このように、退職金制度があると、会社の財務管理が重要となります。財務が悪化したら退職金を減額したり、止めたりしてしまえば良いのではと思われるかもしれませんが、簡単には出来ません。従業員にとって不利益となる退職金制度の変更には、厳格な手続きが必要となるからです。
まとめ
退職金は、退職時に1回限りで金銭等を支給する「一時金」と、定期的に一定の金額を給付する「年金」の2種類があり、会社が成長するための条件の1つになる採用や従業員の働きたいというモチベーション、老後の生活の蓄えなど様々な効果を持っています。
その一方で、退職時にまとまった現金が必要になる為、資金繰りを慎重にする必要があるという面があります。
よく知られている確定給付型の退職金制度の場合には、積立不足が発生した時に、追加給付を求められる場合がありますが、企業年金制度(ex 企業型確定拠出年金)の場合は、定期的に積立を行っているため、資金準備の心配がなくなるという点で注目されています!
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