ポータビリティとは
ポータビリティとは、 離転職の際に自分の年金資産を次の会社の企業制度やiDeCo(個人型確定拠出年金)に移せる仕組みのことです。
「ポータビリティ」と聞いて、おそらく多くの方が携帯電話のNMP(ナンバーポータビリティ)を連想するのではないでしょうか。 まさにそれに近いイメージです。携帯電話は契約する会社が変わっても「電話番号」を持ち運ぶことができます。 確定拠出年金では、「年金記録(年金資産や加入者情報など)」を他の制度に持ち運ぶこと(他制度への持ち運びを「移換」といいます。)ができるのです。
ポータビリティのメリット
ポータビリティのメリットは課税されずに持ち運べることです。
例えば、退職金制度のある会社に勤めていた場合、退職時に退職金を一時金で受け取ると退職金制度はその時点で終了となります。 本来、老後の年金資産とするべき退職金が現金で清算されて、制度を継続することができなくなるのです。
もちろんひとつの会社で定年まで勤め、十分な退職金をもらえるのであれば、退職後の不安も少ないかもしれません。 しかし、近年では転職や独立して起業することも珍しくありません。転職時に退職金を清算し、 勤続期間が長くなるほど有利な退職所得控除を短い勤続年数で使って一時金で受け取ってしまうのは、老後資金の準備としては大変不利となります。
確定拠出年金のポータビリティ制度はまさにこの勤続年数の連続性を担保する仕組みです。 確定拠出年金を含め、様々な制度間を課税されることなく持ち運ぶことが可能で、かつ積立を続けることで退職所得控除の算定基礎になる勤続年数も通算されます。 この「課税されずに持ち運べ、掛金を積み立てた期間は勤続年数として通算される」がポータビリティ制度の大変大きなメリットです。 転職による退職金の税務上の不利をなくし、着実に老後の資金を準備できるからです。
ポータビリティの注意点
①運用していた金融商品は一旦売却し現金化される
確定拠出年金では、ポータビリティを利用し、年金資産を移換する際は運用商品は一度現金化され、次のプランで選択した運用商品を購入します。 仮に移換前後のプランで同じ運用商品があった場合でも現金化後の購入となります。 また、運用商品によっては現金化に伴うコスト(信託財産留保額)が発生する場合があります。
②移換を忘れていると自動移換されてしまう
退職後(資格喪失後)、ポータビリティを利用せず6ヶ月が経過してしまうと国民年金基金連合会へ強制的に資産が移換されます。 これを「自動移換」といいます。
自動移換されると、確定拠出年金の通算加入者等期間(加入者期間と運用指図者期間の通算期間)に通算されず受給開始可能年齢にも影響があります (60歳での受給には通算加入者等期間が10年以上必要です)。また、資産の運用もできず、管理手数料がかかってしまいます。 自動移換の期限までに移換手続きを忘れないようにしましょう。
自動移換を減らすことを目的に、自動移換する前に別の確定拠出年金の口座が開設されていることが判明した場合、 もしくは既に自動移換された方が新たに確定拠出年金口座を開設した場合、自動的にその確定拠出年金口座へ移換されるようになりました。
まとめ
確定拠出年金のポータビリティ制度は、離転職の際に自分の年金資産を次の会社の企業制度やIDecoに移せる仕組みのことです。課税されずに持ち運ぶことが可能で、掛金を積み立てた期間は勤続年数として通算されるという点がポータビリティ制度の大きなメリットです。一方で、移換前後のプランで同じ運用商品があった場合でも現金化後の購入となるため、 運用商品によっては現金化に伴うコストが発生するという部分は注意が必要です。